小説『記憶のいろは』第十章その一

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 あれから一体どれほどの日々が流れたのだろう。  私は今、聡美さんの心の世界の台所で、膝を抱えうずくまっている。  蛍光灯のブーンという規則的な音と青白い光は、無機質なこの世界を象徴しているよう…

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小説『記憶のいろは』第九章その五

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 聡美は美衣が居なくなる少し前、実家から信司が出て行くのを隠れて眺めていた。 「聡美はちゃんと前に進んでる! その歩みを止めたのは、美衣、お前だ!」  小さかった信司が立派になった姿に、…

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小説『記憶のいろは』第九章その四

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 タクシーが実家前に到着した。  私は二人の子供の手をとり、駆けるように玄関へと急ぐ。  祈るような思いで玄関チャイムを何度となく鳴らした。 『早く、お母さん、早く出てきて』  もし…

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