小説『記憶のいろは』第九章その三

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 あれは寒い朝だった。  雪も滅多に積もることのない前橋市内でも数センチの雪が残り、シャリシャリと音を立てながら車は走っていた。  出勤する夫を見送り、すぐにタクシー会社に私は電話した。 …

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小説『記憶のいろは』第九章その二

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「ママのしゅくりーむだーいすき」  拙い言葉が耳元で蘇り、私ははっと顔を上げた。  この声は信司の声。  まだシュークリームと発音できず、しゅくりーむになってしまう、あの可愛い我が子。 …

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小説『記憶のいろは』第九章その一

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「美衣!」  その声に美衣さんは顔をあげる。  下になっている私にすら分かる満面の笑みを浮かべると、私の髪から手を離し、私の頭をまたぐようにしてかけ出した。 「聡美! ばか聡美!」 …

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