小説『春を待つ蟻』第四章その十四

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 新瑞橋駅のH7出口から地上に上がると、もうあたりは暗くなっていた。  街灯の明かりを頼りにあたりを見渡すが、どの建物も記憶をかすりともしない。  淡い期待は自分に裏切られてしまう。 「ご…

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小説『春を待つ蟻』第四章その十三

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 愛名の告白を聞いた時、私は愛名に強い怒りを覚えた。  だが同時に、心の奥底で安堵していたようにも思う。  愛名を責めることで、『私は悪くなかった』と思うことができるからだ。  葬儀中、父…

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小説『春を待つ蟻』第四章その十二

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 私たちが乗り込んだ車両は半分ほど席が埋まっていた。  新幹線の濃紺色の座席は、今回の旅で座ってきたどのシートよりも座り心地がいい。  それでも居心地が悪いのは、私が新幹線に乗りなれていないせい…

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